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はじめまして。 こちらは県妙子(あがたたえこ)が運営する「ふたりはプリキュア」をメインとする、白泉社系やアニメなどの男女カップリング甘々系二次創作よろずサイトです。 個人のファンサイトですので、各版権元とは一切関係ございません。 二次作品に興味のない方はブラウザバックでお戻りください。
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「さむ…。」
なんとか試験期間を無事に終え突入した冬休み。
恒例の早朝ランニングを終え、息を整えるため、河原へと足を向けた。
この河原は定番のコースだが、あえてここを選ぶには理由がある。なぜか、ここは彼女との遭遇率が高いのだ。
しかし、冬の河原は他よりも気温が低い。
冷たい水面に冷やされた空気が、風に運ばれ顔面にたたき付けられる。
赤くなっているだろう鼻を覆うように、衿元のタオルを引き上げた。
「いい天気だ…な。」
自分の気分とは裏腹に空は碧い。
この落差に目が眩みそうだった。


抱き続けた想い 中編



空を仰ぐ。顔をあげるだけでも気分が下向きになることを防げる気がする。こんなことでもしておかないと、どん底まで堕ちていきそうなのだ。
自分から好きになって、なおかつ膨らむ想いを抑えられないと思ったのは彼女が初めて。
元々恋愛なんて縁がなかったから、免疫がないからこんなに執着するのだろうか。
わからないが変容した想いは膨らむばかり。
オレはどうしたいんだろう。
そう、改めて考える。
彼女が別の男と共にいるのは許せない、と思うのだが、自分に告白する勇気があるのか、と言われると、現状を鑑みて言えない、と思ってしまう。というより、怖いだけかもしれない。
彼女が応えてくれないことが怖い。
「くそ。」
頭を掻きむしり、河原を見る。
彼女が男と話をしている映像が脳内でリフレインする。
その途端、腕が振るえ、内臓が絞られるような不快感が沸き起こった。
相手の男に嫉妬する。
対等な位置にいない自分にうんざりする。
マイナス思考に凝り固まった頭は、まともに働いてくれそうになかった。
ひとつだけ言えるのは、会いたいという気持ち。
ただ、ひたすらに会いたい。
そう思って足を向けた場所だが、人気がなく落胆した。
それはそうだ、こんなに寒いのに誰が好き好んでこんな所にくるだろう。自分の馬鹿さ加減を罵りながら、家に帰ろうと方向転換すると、少し離れた場所に彼女がいた。
「美墨さん………。」
諦めかけていた出会いに目を疑った。
しかし、ハイネックにセーターを重ね、ダウンベストを羽織ったミニスカート姿の彼女は、確かにこちらを見て立っている。
一歩一歩、彼女に近付く。彼女は黙ったまま身じろぎもしない。ふいに、最後に顔を合わせた時の傷付いた眼を思い出した。
「……この間は…ごめん。」
あと一歩で彼女に触れることができる距離まで近付く。
彼女は大きく瞳を見開いたまま。
「美墨さん…?」
手をそっと彼女の髪に差し入れようとする。その仕草に彼女の瞳が揺れ、潤んだ目尻からぽろりと一粒雫が落ちた。
それが目に入った瞬間、身体が動いていた。
右手で、彼女の後頭部を押し付け、左手は細い腰を絡げ取る。意外と線の細い肢体を自分の腕の中に包み込んだ。
「先輩…!」
彼女はオレの胸を押し、オレから逃れようとした。その動作に、理性が吹っ飛んだ。
「いやだ…。」
隙間のできたオレと彼女の間を力付くで埋める。
両腕を彼女の背に廻して思いきり抱きしめた。
「いやだ、離したくない。」
「ちょ…先輩?!」
彼女の髪に顔を埋め、ゆっくりと息を吸う。久方ぶりの彼女の薫りに頭がクラクラした。
完全に参ってる。この手を離すことなんて出来そうにない。
「先輩……いたっ……!」
苦しそうな彼女の声に我に返り、慌てて腕を緩めた。完全には解かず、拳一つ分くらいの隙間を作るのみ。
面を上げない彼女に不安感を募らせながら、声をかけた。
「美墨さん……ごめん。…あの、怒ってる……?」
「…………。」
「美墨さん………?」
顔を覗き込もうと身を屈めると、掠れた声が聞こえた。
「え?」
声は小さく震えていて、耳に届かない。もう一度聞き直そうと腰を落として彼女を見上げた。
「なんでこんなことするんですか。」
眉をひそめ、肩を震わせる彼女に不安が増す。
「なんであたしがもう諦めようと思った時にこんなこと…!」
涙が溢れてどんどんこぼれ落ちていく。
その様子に狼狽え、オレはかける言葉をなくした。
「離してください…、離して!」
どん、と押され、たいして力の入っていなかった腕が解ける。彼女の剣幕に押され、一言も発することができない。
「美墨さん…。」
オレの腕から逃れた彼女は踵を返して来た道を戻ろうとした。それをもう一度止めようと必死で追う。
「美墨さん!」
「やだ、離してください!」
腕を捕らえるが彼女の抵抗は激しい。その時、脳内にあの映像がリフレインした。
煮え繰り返るような怒りに体中が染まる。
「そんなにあいつの方がいい?」
「……え……?」
何のことかわからない、という表情でこちらを見上げる。
「でも、あげない。行かせない。」
そのまま、彼女が言葉を紡ぐより早く、唇を重ねた。意表をついた攻撃に抵抗が止む。その隙に、彼女の唇を丹念に味わった。
甘くて、苦くて、現実感のないファーストキス。
苦しくて苦しくて、何も考えられずにただ自分の気持ちを押し付けた。

「ただいま…。」
帰宅の言葉を呟くが、家人の気配はない。
そっか今日仕事だったっけ、と思い出し、ほっと息をついた。
誰もいないことがこんなに有り難かったことはない。
ざっとシャワーを浴び、部屋着に着替えて自分の部屋へと向かった。
ベッドに身体を投げ出し、先刻の行為を反芻する。
なんてことしたんだろう、後悔ばかりが押し寄せる。
あの後、したたかにひっぱたかれた頬が痛い。そしてぼろぼろと泣く彼女の顔が浮かび、改めて自己嫌悪に陥った。
「あんなことして、好きになってくれ、は無理だよなぁ…。」
どうしても抑えられなかった衝動。触れた喜びより泣かせた後ろめたさが勝つ行為。望みの少ない気持ちだったとは言え、こんな結末を迎えたかったわけではない。
せめて、きちんと自分の想いを伝えたいが、今となってはそれさえも過ぎた望みになってしまった。
深く息を吐く。
「なにやってんだ、オレは…。」
そう一人ごちる。このままでは堂々巡りだ。
食事をする気にもならず、ベッドでふて腐れていると、甲高いチャイムの音が鳴った。
動く気にならず、居留守を決め込もうとしたが、一定の間隔で鳴り続ける。仕方なく重い身体を引きずりながら、玄関の鍵を開けた。ロックが外れた途端、バタンと扉が開かれる。そこには幼なじみである雪代ほのかが仁王立ちで立っていた。
その姿を認め、血の気がひく。ほのかは彼女の親友。
一瞬で糸が繋がり、何のために来たのかが分かってしまった。
「…誰もいないから、上がって。」
中に促し扉を閉める。リビングへと誘導し、お茶を入れた。几帳面なほのかは、「お邪魔します。」と声をかけてからスリッパを履き上がってくる。
……昔、ほのかの来訪を心待ちにしてた時期もあったな、とぼんやり考える。
お茶を差し出し、テーブルに向かい合って座った。
しばし、無言の時間が流れる。
「…頬、痛そうね。」
「……まあね。」
苦笑いすら浮かべることができずに下を向く。いつもなら、ほのかが怒る時は怒涛のような説教が始まる。
でも、今回はその気配がない。
不審に思いながらも、言葉にすることはできなかった。
「…なぎさが、泣きじゃくってるのを見つけたの。聞いても何も答えてくれなくて。」
「………。」
「でも、なんとなく藤村くんに聞けば分かるような気がしたから。」
まっすぐにこちらを見つめるほのかは、責めているようにも怒っているようにも見えない。
「最近、なぎさも、藤村くんも様子がおかしかったわよね。……二人に関係あることだと思うのは、穿ちすぎ?」
何も答えられない。
一言も発しようとしないオレを見て、ひとつ、息を吐きだすと、ほのかは続けた。
「私が口を出すべきじゃないかもしれない。けど、あんななぎさを放っておけるほど、私も大人になれないの。」
お茶を一口飲む。改めてこちらを見遣る。
「教えてもらえない…?」
欺くことを赦さない真摯な瞳に、オレは負けた。ゆっくりと口を開き、自分のしたことを懺悔した。
「実は……。」

全てを語り終えると、肩の荷が降りた気がした。
吐き出して気分は向上したが、気になるのは前に座るほのかの反応。ほのかはお茶を飲み干すと鋭く切り込んできた。
「藤村くん…貴方何馬鹿なことしてるの。」
おっしゃる通り、馬鹿なことをしでかしたと思う。
「どうしてこんなところでいじけてるの?」
「え……?」
続く言葉が予想と違い、オレは首を傾げた。
「だって、貴方まだ大切なこと言ってないじゃない。」
「大切なことって…。」
「好きって気持ちを伝えてないじゃない。」
それはそうだが、あんなことしておいてのこのこ顔を出せるほどオレは神経太くない。
それに、いくら何でも気が付くと思う。
「行動したから気付いてもらえるなんて大間違いよ。藤村くんにはきちんと謝罪して自分のことを伝える義務があるわ。……藤村くん、貴方はなぎさとこれっきりになりたいの?」
ほのかの言葉が突き刺さる。
「そんなわけない。」
即座に否定する。だが、その次を続けることができない。
「結果が分かっているから怖い?でも、分かってるなら余計に前へ進むしかないと思うけれど。」
「正論だな。それでも……。」
躊躇する。自分がこんなに臆病だとは思ってもみなかった。
「藤村くん。」
真正面からほのかはぶつかってくる。これが幼なじみの温情であることはひしひしと感じられた。
「最期の忠告よ。このまま時間をおけば確実になぎさと顔を合わせられなくなるわ。でも、今なら間に合うかもしれない。…それどころかイイコトあるかも、ね。」
このどん底状態でどうやって「イイコト」が訪れるというのか。しかし、言っていることは正しくて反論のしようがない。
覚悟を、決める。
「分かったよ。それで?美墨さんはほのかの家か?」
我が尊敬すべき幼なじみは「流石ね、藤村くん。」とにっこり微笑んだ。

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プロフィール
HN:
県妙子
性別:
女性
趣味:
おもちゃ集め
自己紹介:
「ふたりはプリキュアSplash☆Star」から視聴を始める。
折角なので、無印DVDをレンタルしてみるが、それがクリーンヒット。
全てのプリキュアシリーズを視聴するに至る。
ちなみに好きなキャラは藤P。
カップリングは藤なぎ。ちょっとキリほのに萌えるものもある。
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