藤なぎ大晦日→お正月の出来事。
すっごい久しぶりな人がでます。

「なんで大晦日に男の顔みなきゃなんないんだよ。」
木俣はわざとらしく溜息をついた。
それはこっちの台詞だと思う。
「んなの知るか、おまえが彼女でも作ればいいだろ。」
相変わらず、ほのかに片想い中の親友にキツイ一言を送った。
今日は大晦日だ。
本当なら美墨さんと二人で過ごしたかったのだが、オレの幼なじみである雪城ほのかから物言いがついたのだ。
曰く。
「お正月は藤村くんに譲ってあげるから、大晦日は私に譲りなさい。」
最近オレの本当のライバルは、幼なじみなのではないかと考えている。
仲がいいのもすぎるんじゃないか。
女同士のせいか、色々ないしょ事なんかもあるようで、時々、「みっぷるん」？とかなんとか言ってるのを耳にはさむ。
仕方ない事だが、少し悔しい。
大晦日に一人で過ごすのもナンなので、親友と待ち合わせて近くの神社に来た。
美墨さんと会えるかもしれないことも折り込み済みだ。
なんせお祭り好きな彼女は夜店に目がない。
ヤキソバ抱えて嬉しそうに笑う彼女が目に浮かぶようだ。
しかし、この人出。
辺りは人・人・人。
近くに知り合いがいても見過ごしそうだ。
「なんでこんなに多いんだろ？」
オレが呟いたのを聞き咎めた木俣が教えてくれた。
「あれ？おまえ知らないの。なんか今年はこの神社、創建５００年とかで、色々あったらしいよ。それで今年最後の締め括りに夜店拡張して、テレビとかもくるんだって。」
「へぇ…。」
ほのかのやつ知ってて美墨さん取ったな…。
心の中でほのかに対する愚痴を山ほど並べ立てた。
元々美墨さんがほのかの親友で、それをきっかけに交流が始まったこともあって、ほのかには頭があがらないところがあったんだが、今回だけは文句を言うこと決定だ。
頭の中で、その構想をねっていると、視界の隅に何かを捕らえた。
「…木俣、悪いけどちょっとここで待っててくれないか？」
「およお、ひぃいぜ。」
口をイカ焼きでもごもごさせながら、木俣は了承した。悪い、と手を振り、オレは森の方へ走った。
今の、見間違いでなければ…。



続きます。

[3回]