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冷え込んだ空気が身を打ち付ける。
マフラーからはみ出た耳が痛い。
それでも足が向いた極寒の河岸を歩き、大きく息を吐いた。
今日は2月14日。所謂バレンタインデー。
右手には紙袋にこれでもかという程の量の綺麗にラッピングされたチョコレートが入っている。
どれもが暖かい気持ちの印。それにも関わらずオレの気持ちは晴れなかった。
Saint Valentine's Day 省吾version
結局今日は彼女に会えなかったな、とぼんやり考える。
時々、偶然朝夕に会えたり、ほのかを介して約束する程度の知り合い。そんな位置にいるオレが今日という日に逢いたい、と望むのはお門違いというものだろう。
それでもどこかで期待していた。彼女が今日、オレに逢いにきてくれることを。彼女がチョコレートを差し出してくることを。
自分の馬鹿さ加減に飽き飽きしながら、とぼとぼと足を運んでいると、土の見える地面にうずくまっている女生徒がいるのが目に入った。
「あれ?美墨さん?」
逢いたいと念じていた彼女が、沈んだ様子で川面に向かっている。
声をかけ、彼女に歩み寄ったところで手の中に納まるラッピングされた包みが目に入った、
「ふ…藤P先輩?!」
オレの突然な登場に驚いたようで、声が裏返っている。
彼女の隣に腰を降ろし、自分の動悸を隠しながら言った。
「こんなとこでどうしたの?かなり寒いと思うけど。」
「い…いえ、別になんにも!」
伏せられた顔。
さりげなく掌に覆い隠された小さな箱が、目を奪った。
「あれ?それ…。」
(やっぱり…そうだよな。)
言葉が途切れる。
丁寧に包まれ、リボンをかけられたそれが、オレが欲していたものだと確信した瞬間、腹の底から冷えた感情が溢れてきた。
「……誰かにあげるつもりだった?」
その声のトーンに彼女は訝し気にこちらを見遣る。
少し目線を泳がせ、決心したようにオレに向き直った。
「えっと…一緒に食べませんか?!」
その意表を突いた言葉にオレの身体が固まった。
「えっと、昨日作って美味くできたし、ほのかと食べようと思って持ってきたんですけど、一緒に食べれなくて!」
「………。」
二の句が継げない。
どう見ても彼女の手元にあるものは、義理や友チョコではなくて、本気のチョコ。
「えっと、だから……よかったら…。」
食べてもらえませんか?
小さく告げられた言葉と共に、彼女は丁寧に包んだ包装紙とリボンを綺麗に解き、箱の蓋を開けた。
中から覗いたのはココアパウダーをふんだんに塗したトリュフ。
「…どうぞ。」
俯いたまま差し出されたチョコを一つ掴んだ。
「…いただきます。」
口に運ぶと、ゆっくりと咀嚼する。口腔に拡がる豊潤な甘さと香り。
「…美味しいよ、美墨さん。」
「ホントですか?!」
これを渡されるはずだった男に羨望する。
伝えることにできなかった想いの塊。これが今、オレの口に入っている。
「……ありがとう、美墨さん。」
それでも、彼女が思い切れなかったために繋がったオレの想い。これを幸運と呼ぶのは意地悪すぎだろうか。
Saint Valentine's Day
それは男が命運を別たれる運命の日。
fin.
なぎさversionもよろしければどうぞ。
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折角なので、無印DVDをレンタルしてみるが、それがクリーンヒット。
全てのプリキュアシリーズを視聴するに至る。
ちなみに好きなキャラは藤P。
カップリングは藤なぎ。ちょっとキリほのに萌えるものもある。