少々散文的ですが、これで完結です。

なぎさは慣れた様子で、相対する女の子に手を差し伸べた。
「ありがとう！気持ちは嬉しいよ。だけど、私も好きな人がいるから・・・。ごめんね？」
少し背の低い下級生の女の子の顔を覗き込む。
そこだけ見ていると、「かっこいい」という言葉が少し似合う気がした。
おそらくこういった雰囲気がなぎさの女子人気を高めているのだろう。
一緒にいるほのかとの絡みでますますお姉さま志向が高められている気がする。

オレがいるのに、ね。

彼氏であるはずの自分がカヤの外になっていることに苛立ちを覚えた。
この状況は不本意だ。
相手が男だろうが女だろうが、自分以外の人間が、なぎさの横に並ぶのはいい気分がしない。

ダメだ。もう黙ってみてられない。

なぎさがきっちり断ってようと、相手が敵対心を丸出しにしているのだから、自分が出て行くことはおかしくないはずだ。
そう思い、オレはフェンスを潜り抜け、なぎさのもとへと走った。
あ、と驚く顔を見せたライバルに笑いかけ、なぎさの腰に手を回す。
「えっセンパイ・・・！！！」
オレを見て狼狽するなぎさに微笑み、そして一言。
「悪いけど、なぎさはオレのだから。譲らないよ。」
「じゃ、なぎさ。一緒に帰ろう。ほのかは先に帰るらしいから、送るよ。」
口をぱくぱくさせて、一言も発しないでいるなぎさにも至近距離で笑いかけてやる。
テレやな彼女がこれで全く動けないのは計算済。
そのまま彼女を連れてその場を後にした。

「せせせせせせんぱいっ！！！！！」
なぎさは足をとめ、顔を真っ赤にさせてオレに詰め寄った。
こういう表情もかわいいとしかいいようがない。
「さっきのはなんだったんですかぁ！」
「先手必勝だよ。オレ美墨さんを渡す気ないし。」
そうじゃなくて、と涙目になりながら彼女はオレに近づく。
「わたし、ちゃんと断ってたのに・・・あ、あんな風に・・・下級生の前で・・・！」
どうやらちょっと怒っているらしい。
でも、仕方がない。
自分でも気がつかなかったけど、オレはずいぶんと独占欲が強いようだ。
「ごめん、だけどオレ本当に美墨さんが好きなんだ。
だから、告白の現場なんか見たくないし、ライバルは追い払いたいし、何より
きみがオレのものだと主張したい。」
なぎさの目を見つめ、真摯に語りかける。
そうすると彼女はますます顔をほてらせた。
真っ赤に染まる彼女の顔は見てて飽きない。
それどころか、少しやばい方向に思考が進んだ。
こんなに怒らせた時にやったらダメだと理性は訴えるが、本能がそれを押しのけた。

彼女の熱に触れる。

一度触れたら、少々のことでは止まらない。
軽くあわせた唇から彼女の熱を奪い取り、こちらの熱を伝えるために角度を変えてついばんだ。
（あま・・・。）
生クリームより甘いんじゃないかと思う。
そんな風に思いながら２度・３度と唇を這わせると、彼女の体がかしいだ。
「みすみさん！」
崩れ落ちた彼女の体を支えると、顔を仰向かせる。
「美墨さん、だいじょう・・・ぶ・・・。」
想像通り、彼女はすっかり目をまわし、気絶していた。
（しまった、やりすぎた・・・。）
そう気づいたが後の祭り。
オレは再び彼女を背負って彼女の家まで送ることになった。


幸い、帰宅途中のほのかに会えたため、美墨さんの自宅には余計な言い訳をすることもなく、スムーズに見送りができた。
ほのかには追求されたが、あったままのことを伝えると、あきれたように一言忠告された。
「藤村くん・・・我慢しないとなぎさに逃げられるわよ・・・？」
「・・・気をつける・・・。」

今夜はきっと眠れない。
想定外のファーストキスが思考回路を狂わせた。

[11回]